【コミカライズ】若き社長は婚約者の姉を溺愛する《宮ノ入シリーズ①》【番外編更新】

「美桜(みお)さん、おはようございます」
「お、おはようございます」

　裏道へ抜ける路地は複数あるのに、なぜ私がここを通るとわかったのか。
　重苦しい雰囲気。その雰囲気の名は威圧感。

　――ここから逃げ出したい。

　そう思い、足早に八木沢さんの横を通ろうとした瞬間、足が壁を蹴る。
　前を八木沢さんの足に遮られてしまい、それ以上進めない。
　背筋に冷たい汗が流れた。

「なにをするんですか？　通してください！」
「有給休暇届を出しておきました」
「そんな勝手に！」

　八木沢さんの顔を見ると、笑っていたけれど、目は少しも笑っておらず、とても怖かった。

「なぜ、瑞生(たまき)様を避けていらっしゃるのでしょうか？」
「……社長には婚約者がいるのに、私がつきまとうのはおかしいですから」
「あれは沖重側が仕組んだ罠です。瑞生様の本意でないことをわかっているくせに、傷つける行動をとる意味がわかりません」
「私が社長のお相手に相応しくないからです！　二人が並んでいるのを見たら、私よりずっとお似合いでした」
「だから？」

　八木沢さんの声は冷たい。
　私を見下ろす目はまるで、チンピラを通り越してヤクザそのもの。