怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~

 結婚しても頻繁に掛かってきていた母からの電話にうんざりしていたはずなのに、いざそれがパタリとなくなると私の方が母を心配に思ってしまう。

 リビングのソファに腰を下ろした私は携帯端末を手に取り、気が付くと母に電話を掛けていた。


《優月、どうしたの?》


 数回のコールのあとで母の声がしたときは心の底から安心している自分がいた。


「お母さん元気?」

《ええ、もちろん。珍しいわね。優月がお母さんの心配をするなんて》


 そう言って、母がクスッと笑う。


「最近、お母さんからの電話がなかったからどうしてるのかなと思って。少し前までは毎日のように電話で話していたから」

《そうね。優月が結婚してからもお母さんはあなたのことが心配でしつこく電話をかけていたわよね。でも、もうやめようと思ったの》

「やめる?」


 すっきりしたように話す母の声に耳を澄ませる。


《優月のことは悠正さんに任せることにしたのよ。お母さんはもう優月の心配をするのはやめて、あなたの幸せを見守ろうと思って》


 そこまで話すと、母が突然《ごめんね》と謝罪の言葉を口にした。

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