きみと、どこまでも堕ちていきたい




ねえ、何で。お姉ちゃん。
何で、あんな男のために死んだの?

『あの人がいないと、わたし、生きていけない』

以前はあんなに幸せそうに語っていた姉は、2日前、そう呟いて床に座り込み、遠くを見つめたまま涙を流した。

『お姉ちゃんだったら他にいい人見つかるって』

『だめなの!あの人じゃなきゃ…愛してるの』

『だってその人…奥さんがいるんでしょう?』

『でも、私を愛してるって。奥さんと別れて私と一緒になってくれるって言ったの。なのに…』

左手の薬指には、小さなダイヤがついた指輪。
“あの男”からもらったものだった。
それを右手で大事そうに包み込む。

大粒の涙が何度も何度も、手に零れて、伝っていく。


この日、お姉ちゃんは“あの男”に別れを告げられたらしい。

だから、死んじゃったの?

“あの男”は、そこまでして愛する価値のある男だったの?
< 2 / 48 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop