8月25日(後編)
「それを思って俺は身を引いたんだけどな〜」

そう言った日向くんは夜空を見上げる。


「俺ね、紗良のこと好きだったんだよ?知らなかったでしょ?」

「…知らなかった…」

そんなの知るはずないし、わかるわけもない。


「あ、でも今は違うよ?すっごく可愛い彼女いるしね」

と笑う日向くん。

「俺と朝陽はさ、紗良が初恋だったんだよ」

「そうだったの?」

「幼稚だけど、喧嘩の原因もそれ」

「っ…」


わたしが喧嘩の原因ってこと?

何か申し訳ない…ような…。


「紗良の知らないところで、紗良の取り合いになってたんだよ。おかしいでしょ?でも懐かしい」

と目を細めて笑う日向くんの横顔は朝陽にそっくりだ。


「俺はもう前に進んでるのに朝陽だけあんな感じだからね…ほんと困ってる。俺は仲直りする気満々なのにね」
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