陰に埋もれし英雄に花束を
自由に夢を描いて、友達と学校に通って、街で綺麗なドレスやアクセサリーを買って、恋をして、結婚をして、子どもを産んで、幸せな家庭を築いていったのかもしれない。そう思うと、アーサーの胸に閉じ込めていた思いがあふれていく。

「ジャンヌ!」

アーサーは家の外へ飛び出し、外の空気を吸っているジャンヌの元へと向かう。まともに鍛えていない体はすぐに悲鳴を上げ、息が上がった。

もう逃げたくない、それがアーサーの今の気持ちだった。もうこれ以上、ジャンヌ一人に背負わせたくない。アーサーはその気持ちで、目の前にいるジャンヌを抱き締める。

「俺も戦うよ……。片割れに全部背負わせるのはもう嫌だからさ……」

アーサーがそう言うと、自身の服の胸元が温かいもので濡れていく。アーサーはジャンヌを抱き締め、「ありがとう」と何度でも呟く。

こうして、二人の英雄が戦地に立つことになった。







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