10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

「あの……そういえば麻子さん成井総合病院に入ってきたの、先生知ってたんですか?」
「ん? あぁ。これからのこともあるし、人事のことは少し噛ませてもらってるからね。彼女、看護師に助産師の資格も持ってるし、腕もかなりいいんだ」
「そうなんですか! 麻子さん、すごいなぁ」

 私は思わず目を輝かせる。
 麻子さんが活躍しているのを聞くの、すごくうれしい。もうすっかり私は麻子さんに憧れているのだ。

 美人だし、気さくだし、さばさばしてて、優しい……。まるで姉のようだ。
 そんなことを思って、私は今日した麻子さんとの約束を思い出す。

「あ、それで、土曜日に麻子さんが一緒に買い物とか行こうって」
 私が言うと、先生は目を細めた。

「2人で?」
「はい。いいですか?」

 私が聞くと、先生は、うーん、と呟く。だめだろうか?
 そう言えば結婚前もほとんどなかったけど、結婚してからも誰かと出かけたことなかった。大和先生がいないときはたいてい家事をするか、テレビを見てたし。

「だ、だめですか?」

 私が先生の顔を覗き込むと、先生は困ったように笑った。

「はは、相当行きたそうだな。……そうだな。土曜は俺も病院だし、果歩も寂しいよね。行っておいで。でもあまり遅くならないようにね。あと男の人や変な人について行ったりしちゃだめだよ」
「はい!」

 私は喜んで返事をし、そしてふと疑問に思う。「っていうか、変な人についていかない、とか大丈夫ですって!」

(大和先生、私の事子ども扱いしてない⁉)

 そんな私に先生は苦笑して、

「まぁ、花菱さん、抜け目なさそうだし大丈夫だよね」
「私だって大人ですから大丈夫ですぅ!」

 思わず叫ぶと、先生は、だから心配なんだよ、と言った。
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