10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

「ありがとう」
 私は、きゅと唇をかむと、先生の顔を見る。

「あの……昨日は約束破ってすみませんでした」
「うん。もう破らないでね」
「はい」

 よかった、謝れた。私はほっとしていた。
 先生はふっと笑うと、おいで、と私を手招きする。

 先生の隣に座ろうと思ったら、何故かまた先生の膝の上に座らされた。
 なんで? と眉を寄せた時、先生は私の唇にキスを落とす。その優しさと温かさに、思わずうっとり目を瞑る。

 ちゅ、ちゅ、と何度も軽いキス。角度を変えて、長さを変えて、まるで遊んでいるみたいなキスに思わず笑みがこぼれた。
 唇が離れて、また笑い合う。

(私、今、幸せだなぁ……)

 ふとそんなことを思った。
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