10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
僕は、大和が大学病院を辞める決断した後、何かに誘われるように自分もそのレールから降りた。
そして成井総合病院に入って、そこで大人になった果歩ちゃんに再会した。
その時僕は、自分のそんな突然の決断に全く後悔してはいなくて、それに自分でも驚いていた。
再会してから毎日のように、彼女のことを本気で好きになって、あのときの言葉を本気にしようと思っていた。
でも、近くにいればいるほど大和の気持ちも十分すぎるほど分かっていたし、大和の両親もあんな優しい人たちだから。
彼女の幸せを第一に考えて、僕が二人の背中を押したはずなのに……。
なのに今になって、拗れた感情だけが残ってしまって、こうして自分の気持ちの深さが熱をもって飛び出してきて……彼女を困らせている。
でも、困ればいいと思った。
ーーー少しでも彼女に、僕のことを考えていてほしいと思ったんだ。