10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

 頷くことも、首を振ることできずに、ただその場で固まる。
 そして、ただただ慌てて目線だけを反らせて叫んだ。

「わ、わ、わ、わ、私人妻ですけど!」
「あはは、そうだね」

 島原先生はいつもみたいに少し笑ってくれて、私はその顔にほっとする。
 だってさっきの言葉で、声で、目線で、分かってしまったんだ。

―――島原先生も男の人で、私のこと「女の人」だって思って見てたんだってこと……。
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