10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

「ほら、そうやってすぐに不安が顔に出る」
「でも、そんなこと……」

「もしやって、怒られるなら僕が怒られてあげる。だってこれは僕の提案だ」
「沈められますよ……?」
「あはは、僕、実は昔水泳の県大会で優勝したことあるから大丈夫だよ」

 島原先生は笑って言った。
 私が返事をできないままでいると、

「決めるのは果歩ちゃんだから、自分で決めなよ。大和と……仲良くね。じゃ、僕もう行くわ」

 そう言って、島原先生は苦笑して歩いて行ってしまった。
 私はその背中をずっと見送り続けていた。


ーーーその時、島原先生は自分の頭をかいて、

「はぁ……答えは分かってたけどね。もういっそ昇進しまくって病院長の椅子、狙おうかなぁ……」

 私には聞こえないようにそう呟いていたそうだ。
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