10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
31章:それを教えてくれたのは。

 『暗示ができる』かどうかは置いておいて、大和先生は私にそれをあまり使ってほしくなかったのだろうということだけは分かる。

 そもそも元々は動物にしか使ってなかったし、それが人にも応用できるなんてみじんも思っていなかったのだ。使えないからと言って不自由することもないし、困ることもない。

(先生があまり使ってほしくないって思ってるなら、私は使わないでおこう)

 そんな風に思っていた。

 きっと大和先生も、話したくなったら話してくれるんじゃないかな……。

 それに最近……いやずっと前から、大和先生は本当に忙しそうだ。

 家にいる時はくっついているけど、それも数時間だけの話で、オンコールは容赦なく鳴るし、副病院長にはまだ就任していないが、その準備なのか会議への出席なども増えている。大和先生へのアポの連絡がこちらに間違ってきたことも何度かあった。
 それが『医師会』とか、『銀行』とか、『医療機器メーカー』とか、『医療なんとか委員会』とか……よくわからないながらも多岐にわたっていて、患者ではない外の人と経営側の人間として会う機会も増えているんじゃないかと肌で感じていた。
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