10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

 大和さんは優しくまた私の頬を撫でると続ける。

「俺はね、歩さんが亡くなる時に言われたんだ。『果歩のこと頼む』って」
「……」

「もちろん、恋愛としてってことじゃないと思うけど……俺はそれをずっと覚えてて、果歩がちゃんと生きて行けるか……変なことに巻き込まれてないか、ずっと心配で、気になってた」

 そんなこと……知らなかった。
 そんな風にずっと思われてたなんて、知らなかった。

 なんだかその事実に泣きそうになる。
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