10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

「まぁそんなことしてたらいつの間にか、女の子として本気で好きになってたんだけど。だから、あの時……島原が果歩の暗示知ってるってわかって、焦った。あぁ、やっぱり島原は果歩のこと好きだったんだって。だから、果歩が暗示かけようとしたのに乗っかった」

 大和さんは口端を上げて笑う。

「……!」
「色々と騙してごめんね、果歩。でも、果歩も暗示で俺と花菱さんくっつけようとしたからアイコだよね? あれ、結構傷ついたんだよ」

 大和先生は、わかりやすく傷つきましたーって顔をして私に見せた。

「うぐぅ……!」

(それ、本当ですか⁉)

 ほんとに傷ついてるのかアヤシイ、と思って大和先生を見るも、大和先生は表情を崩さずに私を見つめる。

「思い出したら、また傷ついてきた気がする……。俺がずっと果歩の事好きだったのに、果歩はまったく気づきもせず、しかもよりによって『憧れの歩さん』の『暗示』使ってあんなことするなんてひどいよね? あれさ、下手すれば俺は果歩のこと好きだから暗示はかかるし、言葉によっては大変なことになったよね」

 どんどん追い詰めるように言葉を続ける大和先生に、私はただ言葉に詰まり、下を向く。

「うぅ……」
「それに、昨日の夜も、暗示で無理やり眠らせるようなことして」

「あれは……!」

 言い訳したいけど、これまでの経験上、これ以上言い訳するといいことにならない気がして、私は口を噤んだ。
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