10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

「ちょっとまってぇええええええ!」

 慌ててそこに走って行ってそれを見ると、目がくらむような大きさのダイヤの指輪と、頭が痛くなる金額がそこに表示されている。

(0が思っているより2つも多い……!)

「だめ! 絶対ダメ!」

 私が泣きそうな顔で叫んでも、いつもと全く違う優しげな表情で、
「気に入らなかった?」
と大和先生は首を傾げる。

「気に入らないとかいるとか、そういう問題じゃないですよ⁉ 何やってるんですか!」
「結婚するんだし必要でしょ」
「話しを勝手に進めないで!」

 思わず叫んでしまってから、はっと我に返る。
 いつもだったら、こんな口の利き方、大和先生にできるはずないのに。

(絶対、怒られる!)

「ご、ごめんなさい……っ」

 慌てて頭を下げる。
 しかし、大和先生は穏やかな声で、

「そう言えば指輪より大事なことがあったな」
と言い出した。

「はい?」
「挨拶しとかないと」
「あ、挨拶って……?」

 私が首を傾げると、そんな私を、大和先生はまた微笑みながら見ていた。
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