10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

「少女漫画とかは読んでたし恋愛には憧れてますけど……私はモテないし、できないものは仕方ないです」
「知識少女漫画って……。さすがに、子どもをコウノトリが運んでくるとか思ってるわけじゃないでしょ」

 島原がからかうように言った。

「さ、さすがにそれくらい知ってますよ!」

 果歩のその言葉に、思わず息を飲んでしまう。

(果歩でも知ってたのか……!)

 まぁもう大人だし当たり前か……という想いと、わずかな寂しさ。思わず、ビールを喉に流し込む。

 そう思っていると、果歩はむぅっとした顔をしていた。ちょっと待て、その顔はかわいすぎないか?
 
「あはは。だよねぇ。安心した」
「あれですよね。オタマジャクシみたいなの飲んだらできるんですよねっ」
「「ぶっ……!」」

 俺が吹いたと同時に、花菱さんも吹いた。

(どんな知識だっ! なんの知識だっ!)

 そう思ったのは俺だけではないようで、花菱さんも唖然としている。もし今後、その知識を教えたやつを見つけたら締め上げよう、とひっそり決意していた。

 島原は苦笑しながら、

「なにそれ。ホラー映画か何か? それとも寄生虫?」

 と言って、おしぼりを渡してきた。そして俺を見ると、

「『誰かさん』のせいで、知識全くないじゃん。どう責任取るつもりなんだろうね」
と言う。

 取るよ。責任くらい喜んでとる。

ーーーその責任がとりたかったから、今まで必死にやってきたんだ……。

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