10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
 気づくと、足の力が抜けてその場に座り込んでいた。

「大丈夫? ごめん……つい……」

 唇を離した大和先生が慌てたように私を覗き込んでいる。私は熱に浮かされながら、先生の目をじっと見て口を開いた。

「もう少し、キスして……」

 先生の少し驚いた顔。その目を逃さないように見つめる。

(1,2,3……8,9,10)

 数え終わったと同時、先生の唇がまた重なった。その心地よさに思わず目を瞑る。
 私はいつの間にか先生の背中を掴んで、自分からキスをしていた。
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