10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

 今までのキスより気持ちよくて、気持ち良すぎて少し怖い。そう思った。
 きゅ、と胸が締め付けられて、脳も顔も身体もおかしいくらい熱くなる。でも、先生にそうされるのが嬉しくして仕方なかった。

 クスリと笑った気配がしたと思ったら、次は、先生は挑発するように私の舌を絡めとってくる。
 私がおずおずとそれに応えると、先生は嬉しそうに舌を絡ませてきた。そのたび、また胸が締め付けられて、感じたことのない感覚が私を襲う。

 初めてのキスの時のように、がくっと座り込んだ私に、先生は屈みこんで私の顔を見た。

「大丈夫?」
「これが、キスの先……?」
「うん。まだ一歩目ってとこだけど」

 そう言って先生は私の頬を撫でる。そして、いつの間にか私の目じりに溜まった涙を拭いて、「目、赤いね。涙で潤んでるし……。驚かせた?」
 先生は目を細めて笑う。

「ごめんなさい」
「なんで謝るの」

(私ね、先生……)

 先生の顔を見ると、先生はまた優しく笑って、私に聞いた。

「もう一回する?」
「いいの……?」

 思わずそう言った私に、先生は笑ってもう一度、同じキスをしてくれた。

 こんなの、知らない。知らなかった。
 それに、こんな風に、先生の事もっと好きになるなんてことも……知らなかったんだ。
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