花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!

どこまでも楽しそうなオレリアを、レオンの膝の上から恨めしく見つめた。


「テドから手紙で、レオン王子が荒れてて見ていられないって。そんな状況で家出してくるだなんて。今頃城は大騒ぎじゃないかい?」

「花嫁にと望んだ女性を亡くしたばかりなのに、大聖女の孫を娶れと言ってきた。そりゃ荒れるだろ。しばしの家出くらい許してくれ」

「花嫁にと、か。でもお前さん、エミリーに振られたらしいじゃないか。心に決めた人がいるって」

「……そっ、そうだけど。俺は諦めるつもりはなかった。気持ちを伝え続けたら、いつかきっと振り向いてくれるかもって」


レオンに頭撫でられ、エミリーはびくりと体を震わせる。


『不敬を承知で申し上げます。私には心に決めた相手がおります! そのため、レオン王子様の花嫁にとのお話は、ついで大聖女の件も、謹んでお断り申し上げます!』


すっぱり断ったあの時の記憶が鮮明に蘇り、私の馬鹿とエミリーは横になったまま静かに涙を流す。


「オレリア、すまないが二、三日泊めてくれないか」

「構わないよ。で、その後はどこにいくつもりだい」

「半年くらいユギアックで放浪しようと思ってる」


せっかく会えたのに数日後には旅立ってしまうとエミリーは寂しさで表情を曇らせ、一方オレリアは「へぇ、そうかい」と企み顔でにやりと笑う。


「空いてる部屋はいっぱいある。今日はゆっくり休むといい」

「ありがとう」


嬉しそうに響いたレオンの声に余計寂しくなって、エミリーは小さな手でぎゅっとレオンの足にしがみついた。




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