花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!

「ロレッタの孫」の部分で、聖女クラスのあたりがほんの一瞬盛り上がる。

マリアン教授も満更でもない顔で笑っていて、今のざわめきが薬師クラスでのことだったらすぐさま注意するだろうにとエミリーはリタと顔を見合わせる。


「どうか、君たちの世代もこの大聖樹が多くの恵みをもたらす存在であり続けることを切に願っている」


生徒と教師にねぎらいの言葉をかけてからエイヴァリー国王は話を締めて、大広間を退出する。

その場から姿がなくなった途端に生徒たちはざわつきだし、ビゼンテとマリアンが「静かに」とそれぞれ声をかけた。

もう城の中に入る機会なんてないかもしれないとエミリーが大広間を見回していた時、背後で「フィデル副団長」と呼びかける声が聞こえ思わず息を止める。

「フィデル」という名で思い浮かぶのは彼の顔。まさか彼がここにと、はやる気持ちを抑えながらそろりと後ろを振り返った。

先ほど入ってきた扉のところに知っている人物を見つけ、エミリーはつい瞬きを繰り返す。

そして、とうとう我慢できなくなり、最後尾にいるのを良いことにそっと生徒たちから離れ、騎士団の男性に話しかけられている彼のそばへと歩み寄る。

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