花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
「……こ、こんにちは」
小声で話しかけると騎士団の男性と、フィデルといつも一緒にいる眼鏡をかけたあの男性がほぼ同時にエミリーへと顔を向けた。
騎士団の男性が「何か」とエミリーに問いかけたが、眼鏡の男性に「私の知り合いです。先ほどの件は確認しておきますので、持ち場に戻ってください」と言われ、「失礼します」とその場を離れていった。
エミリーは眼鏡の彼と向き合い、複雑な気持ちで質問をぶつける。
「今、あなたフィデル副団長って呼ばれていなかった?」
「……はい、すみません。実はフィデルは私の名です」
少しのためらいの後、眼鏡の彼は申し訳なさそうに打ち明ける。知った事実にエミリーも衝撃を受けつつ、ため息混じりに呟く。
「しかも、騎士団の副団長だったなんて」
彼は先ほど傍にいた男性と同じ制服姿だが、胸元に剣の模様の入った立派な黒色の勲章をつけている。
周囲にいる騎士団員に勲章はほどんどついていなく、ついていたとしても眼鏡の彼ほど立派で大きな物ではない。
そのため、彼の位が高いのは簡単に想像でき、副団長だと言われても納得させられるほど。