花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
言いながらリタもフラスコと試験管を両手で握り締め挑戦するが、斜め前の席に座る生徒同様、小さな爆発で幕を閉じた。
何かアドバイス出来たらと思うが、エミリーは塩梅や分量をすべてなんとなくの感覚でやって退けてしまったため、うまい言葉が出てこなかった。
エミリーに続いて合格をもらえる生徒が現れぬまま魔法薬の授業が終わり、そのまま昼休憩へ。
エミリーもリタと教室を出て、寮の食堂に向かって廊下を移動し始める。
午後の授業で行われる小テストの話をしていると、バタバタと駆け寄ってくる足音が後ろから迫ってきて、反射的にエミリーは体を強張らせる。
動けないのに、心臓は重々しく鳴り響く。数秒後、視界を掠めるように横を通り過ぎて行ったただの生徒の姿に、ホッと息をついた。
それでもまだ心から怯えが消えないのは、部屋に侵入したあの男のせいだ。
あの夜、男が逃げてしばらくした後、冷静さを取り戻したリタに連れられて、エミリーは寮の管理人室へ。
話を聞いた管理人も慌ててカルバード学長に連絡を入れ、門番にも警戒の強化を願い出る。そして寮の施錠の確認やら、各部屋への声かけを行なったのだった。