俺が好きなのは、世界一可愛い君

一人称をわざと変えたのは、あの女のやけにぶった喋り方を揶揄するためのものだろうか?



だとしたらあの短時間であれだけの嫌味を、それもあの女を相手取って言うことができるなんて、凄い技術だ。



そして今日はっきりしたこと。


女の喧嘩は怖い。



あの女は今頃、プライドを傷つけられて、憤慨していることだろう。



「心」



立ち止まってから、俯いて黙ったまま、一言も発っさない栗山さんに、一樹が声をかける。



短くても、溢れんばかりの優しさと慈愛を感じる。 



そんな声だ。



栗山さんは俺のたのみを聞いて来てくれたのに、ろくな説明もせず、悪いことをした。



だけどどうにかするのは俺の役目じゃない。



そう思って一樹たちを見守ることにした。

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