俺が好きなのは、世界一可愛い君
「うっ、ひっく、だっ、ぐずっ、だってぇふっっうっ」
結局、言葉にするのを諦めた栗山さんは、体格の差が大きい一樹を、両手をいっぱいに広げて抱き締めた。
一樹も優しく受け入れる。
ようやく落ち着いたらしい、栗山さんの長い話を纏めると、こういうことだった。
1、中2の時、栗山さんの友達があの女に目をつけられた。
2、その友達は、どこからか仕入れてきたその子の好きな人の名前を、大勢と本人の前でバラされるなど、稚拙で精神的ないじめを受けていた。
3、あの女は、この度にうっかり、や、よかれと思って、と持ち前のぶりっ子で押し通していた。
4、唯一栗山さんだけがその友達の味方になり、何度もあの女に訴えてきたが、いつも言い負かされていた上に、最後に皆の中で悪者として認識されていたのは、なぜかいつも栗山さんだった。
5、だからせめて、次にあった時にはあの女の前でだけでも強くあれるように、と思っていた。
6、今日、あの女が入ってきたときには目眩がするほど恐ろしかった。
それでも怜ちゃんへの態度を見て、なにも変わっていないのだと気付き、気づいたら行動を起こしていた。