彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
枯れた花
花壇へ行かなくなって3日が過ぎていた。


きっともう私が花壇に行くことはないだろう。


学校につくと昇降口には雪ちゃんが待ってくれていて、一緒にA組の教室へ行く。


雪ちゃんたちのグループはこうやってできるだけ私が1人でいる時間を少なくしてくれているのだ。


雪ちゃんと会話しながら階段を上がっていると、1人の先生が階段を駆け下りてきて私の前で止まった。


驚いて立ち止まると「矢沢さん、大田だけど」と、息を切らした大田先生の声がした。


最近特別学級に顔を出していないから多少の気まずさがあり、顔をそむけてしまう。


それでも先生を無視することはできなくて、「なんですか?」と聞き返す。


「最近、花壇へ行っていないみたいだね」


大田先生の声は咎めているようなニュアンスを含んでいる。


「……はい」


「それを他の生徒にちゃんと引き継いでもらわないと、花は枯れてしまうんだよ」


大田先生の言葉に私はハッと息を飲んで顔を上げた。


花が枯れる?


まさか、水やりなら佳太くんがしているはずだ。


だけどそれでは佳太くんに罪をなすりつけることになってしまうので、なにも言い返すことができなかった。


「ごめん雪ちゃん。先に教室に行っていて」


私はそう伝えると大急ぎで花壇へと向かったのだった。
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