その甘いキスにご注意を ~鬼上司の顔の裏に隠された深い愛情と激しい熱情~
自分でも気づかないほど、ゆっくりと
早朝特有の、どこか夜の影を残した不透明で曖昧な空気の中。
私はランニングシューズの紐を締め、玄関のドアを開けた。
薄紫の空の下、私が吐く少し荒い息と、ゴム製の靴底がアスファルトの道路を踏む、グッグッ、という音が私の耳を掠める。

これは私の日課の一つ。
平日も休日も、私はいつも朝五時に起きてランニングをする。
これは美容のためでもあるけど、そのためじゃない。
朝、こうして体を動かした方が、仕事の時の頭の回転もよくなるのだ。

「はぁっ、はぁっ……」

ランニングはマンションのエントランスの出入り口から始まり、道路沿いにあるコンビニを横切り、近所の公園まで行くのが片道。
そこから引き返して走り、時間はいつも三十分前後でまたマンションに着く。
今日もいつものように、三十分でランニングを終えた。
上気した頬に、少し暖かくなったけれども、それでもまだ少し冷たく感じる空気が心地よい。

私は部屋に入ってもまだ少し息を荒らせながら洗面所に向かい、汗でベトベトになったスポーツウェアを脱いで洗濯機の中に入れ、服と同じように自分の体も洗いにバスルームへと入った。
< 16 / 16 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop