白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
「どうして私に謝罪などなさるのですか」

 謝罪なんてレミリアの自己満足だ。


 クロードを危険な場所へ行かせ、挙句命の危険に晒してしまった罪悪感を、ロゼリエッタに詫びることで和らげたいだけに過ぎない。

 許さなくていいなんて、それこそロゼリエッタが苦しむだけの言葉だ。どちらを選ぼうとしても、どちらを選んだとしても、心が痛むことに変わりはなかった。

「謝罪など、必要ありません。でも……帰して下さい。クロード様を、私の元に帰して下さい……っ」

 誰も――クロード本人ですら叶えられはしないであろうことを懸命に訴える。

 だけどそれ以外に心から欲しいものなんて何もない。だったらどうしようも、ないではないか。

「私からクロード様を、取り上げないで下さい……!」

 抑え切れない感情のままロゼリエッタはレミリアを振り払った。

 あんなに強く抱きしめていたはずのレミリアの身体は、けれど不意を突かれたのかたやすく離れて行く。


 抱きしめて欲しいのはただ一人だけだ。でも、そのただ一人だけが、抱きしめてはくれない。一度だけ抱きしめてくれたのは贖罪の為だ。


 立っていられなくてロゼリエッタは床にへたり込む。

 あろうことか王女を突き飛ばしてしまった。

 倒れ込んだり、よろめいた拍子にどこかへぶつかったりはしなかったから怪我を負ってはいないだろう。でも不敬罪に問われるには十分な行動だ。

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