sugar spot

 
研修中って。
私と、一緒ってこと?


心臓が煩く働き続けて冷静さを保つことが難しいけど、必死に頭を回転させる。


「…じゃあ、写真展、
なんで一緒に行ってくれなかったの。」


『俺と一緒に行って、
勘違いされても良いって思ってんの?』

『勘違い…って、』

『同期とか、それこそもし会社の人間にバレた時、
必ず何か言われる。』



あの時この男が、私と初日のそれに行くことより、長濱のバーベキューに行くことを選んだ理由は、あまりにも胸を貫く痛みを伴うものだった。


「……私とそういう関係かもしれないって勘違いされるのは、困るって、言った…」


まるで子供のように過去の発言を掘り返してしまう自分の幼さに嫌気もさしたけど、もう全部、間違えたくない。

この男の前で、正直でいたい。


込み上げては止まらない涙も恥ずかしくて、今度は私が顔を見せたくないからと、抱きしめてきている男にしがみつこうとしたのに。

それはあっさり私の腕を解いて制して、どこか性急な様子と共に両手で頬を包まれ、視線を固定された。



「前も言ったけど、お前が困ると思ったんだよ。」

「……なんで、私が?何も困らない、」

そういえば、そんなことを展示会の救護室でも言っていた気がする。

"何も困らない"と、あの時は言えなかった本音をほとんど無意識の中で溢したら、何度か目を瞬いた男が、また溜息を漏らす。


「…憧れの人は、もう良いのかよ。」

「は?」

「研修の時、吉澤さんと話してただろ。
その人と仕事するために頑張って営業部目指してたんじゃ無いの。」


こちらを見つめる男のアーモンド型の綺麗な瞳の奥が、近くで覗かないと分からないくらいに微かに揺れている。


「……あの時、やっぱり聞こえてたの?」


宿泊研修で、確か吉澤さんと配属希望のことを話した時だ。ぽろっとちひろさんに憧れていることも告げたら、とても揶揄われた記憶がぼんやりと蘇った。

尋ねたら苦い表情が濃くなって、肯定を物語る。



「そっちのケジメは、ついたの。」

「けじめ…、」


ずっと頬に両方の手が添えられていて、熱を帯びている。
私の火照りのせいなのか男によってもたらされているのかは曖昧な中で、動悸だけは止まりそうにない。


「けじめかは分からないけど。

ずっと憧れてたことと、
私は私で頑張るって、ちゃんと伝えた。」


「……そんなずっと憧れてたわけ?」

「?あ、うん。就活の時から。」

告げ終えたら、ふうん、とやけに不服そうな確かめる声の後、また全く何の流れか分からないままに、軽く唇を噛まれてしまった。


「…っ、なに?」

「むかついた。」


どうして。
何処に苛立つ要素があったのか掴めない。


はてなマークを何個も頭に浮かべて、視線を泳がせる私の様子を見て

「お前が設計図の拾い出しとか、デザイン部と関わる工程、必死に頑張ってたの南雲さんの影響だろ。」

「………は?」


多分、今日1番のレベルで間抜けな声が、夜の公園で空気を揺らした。

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