sugar spot
出口のない迷路を彷徨っていた私は、もう何度もこの男に支えられていた。
それを実感したら、止まらない。
今までどうやって感情をセーブしてきたのか、もう分からない。
伝えてしまいたい。
「っ、」
気持ちをもっと言葉にしようと、再び口を少し開いたその刹那、涙を拭ってくれていた方の手が片頬に添えられて、そのまま男の唇でそれを塞がれる。
流れを全く予期していなかったから、驚きに目を見開けば、すぐにそれは離されて、形の整った瞳の中には間抜けな顔の私が映っている。
右目の涙袋のほくろが、こんなに鮮明に確認できるくらいに近い距離で見つめ合っていることを実感して、また顔が火照った。
「…お前、暴走すんのやめろ。」
「暴走…?」
「電話も言い逃げするし、
また先に言おうとしてるだろ。」
非難の色をたっぷりと含んだ表情で睨まれてしまえば、どうにも図星なので返す言葉は無い。
「そうかと思ったら、俺だけが聞きたいことは
酔っ払い同期に伝えてたりするし。」
「…、いつの間にか口が滑っただけだし、」
「馬鹿。」
「うるさいな。」
「本当、お前は馬鹿。」
「あんたなんなの。それ以外言うことないの。」
「好きだ。」
流れを止めるような、硬い声だった。
突然のそれに、私の言葉だって、止まってしまった。
「もうずっと、
こっちだって恋愛対象に決まってるだろ。」
『たぶん、とっくの前から、
"ただの同期"じゃなくて、”恋愛対象”だし。』
珍しく困ったように表情を歪めた男を一瞬捕らえたと思ったのに、それを隠すようにまた力一杯に、抱きしめられる。
「……ずっと、?」
その温もりに包まれたら、当たり前に涙が増える。
揺れる弱い声で男の肩に向かって尋ねたら無言を貫いてきたから、ぎゅうと服を掴んで「いつから?」と、また懲りずに質問を重ねた。
はあ、ととても近くで溜息が落ちて、気まずそうな声で「研修中から」と答える男の顔を見たいのに。
それを阻止するみたいに腕にまた、力が込められた。