sugar spot




「…誰にとっての?」

「それは、分かんないけど、世間一般の…?」

「世間一般で言われるようなお手本の男女は、
こんなに顔合わせる度に言い合いしないだろ。」

そりゃあそうだけど、とツンと尖る唇に自分のものを静かに重ね、すぐに離す。





「でも俺は、お前が良いけど。」

「……ふーん、そうなんだ。」

やけにぶっきらぼうな感想を受けて、それが照れ隠しだと気づけるくらいには、一緒に居る時間を、そこそこ重ねてきているとは思う。


「穂高、」

「なに。寝る?」

「…寝るけど、その前に一緒に新曲聴きたい。」


『可愛いってどういうとこ?
なんか、こう、すっごい甘えてくんの!?』

『いや、それは無い。』





この女に限って、そんなことはあり得ない。

了承の代わりに再び顔を近づけたら、慌てた様子で口元を片手で覆ってきて拒まれたので、「邪魔だ」と剥ぎながら、再びベッドに押し倒す。

「…っ、私、お酒臭いから今は嫌だ、」

「俺も飲んでる。」

「曲聴き終わったら、歯磨くから、」

「……磨くから?」

首を傾げつつ促すと、ハッと何かに気づいたように、顔をまた赤らめて眼光鋭くこちらに眼差しを向けられた。


「なんなの?むかつく。」

「知ってる。」

「…………磨くから、その後に、したら。」


ぎこちない促し方に、思わず破顔して2人しかいない空間に笑い声を静かに響かせてしまった。


「何笑ってんの。」


思い切り甘えられるのも、いつかは見たいけど。

こういう精一杯な伝え方に、
こいつだけにしか揺れない感情がある。


我慢できずに結局、唇に軽くキスを落とすと
「あんた話聞いてたの。」と、案の定非難された。


「花緒。」

「なに。」

「明日の夜、お前が平気だったら一緒に飲むか。」

「…今日。」

「ん?」

「たまたま今日、奈憂に
家で作れるおつまみのレシピ聞いたし。


……仕方無いから、良いよ?」

お酒が入っているからか、いつもよりいっそう柔らかく嬉しそうに微笑むくせに、相変わらずの言葉を吐く女に笑った。
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