sugar spot
「……奈憂になんか聞いた?」
「…いや?」
「絶対、聞いてるでしょその顔。」
じわじわと赤みを帯びていく頬と、睨みで細まる瞳にまた笑って、熱を確かめるようにその柔らかい肌に唇を寄せると、擽ったそうに身を捩る。
「で、どっち。」
「え?」
「晩酌、付き合ってくれんの?」
両手を頬に添えてちゃんと視線を間近で合わせながら再び確認すると、ぱちぱちと大きな瞳を瞬かせる度に長い睫毛も微かに揺れる。
「…穂高、酔ってる?」
「酔っ払いは、お前な。」
「煩いな。だってなんか、今日、よく笑う。
長濱との飲み、そんな楽しかった?」
楽しい、というかずっとあの男に揶揄われていた。
最後までそうだった。
『穂高、今のお気持ちは?』
『は?』
『やっと付き合えた彼女、どうですか!?
それ聞くまで今日は解散しません!!』
『めんどくさ。』
「別に?」
「…嘘だ、やっぱり楽しそう。」
ぼかした答えに反して、既にほぐれていた表情を見逃さない女が俺の頬を小さく抓りながら「普段能面だから、分かる」と結局笑う。
『……どうも何も、可愛い以外あんの。』
何度誤魔化しても言わせるまで俺にしがみついて諦めなかったくせに、渋々告げると、盛大に悲鳴を上げて何回も「おめでとう」と騒ぐ男を思い出すとまあ、確かに笑みはどうしたって溢れる。
「…え、自信無くすんだけど。」
「は?」
「一緒に飲んで、私そんなにあんたのこと笑わせられるかな。長濱に相談しよ。」
「すんな馬鹿。
お前は何を目指してんだよ。」
頬を良いように操られていた手を解いて自分の指を絡ませると、眉間に皺を寄せて、
「……できれば、良い彼女。」
とぽつり呟いた。
まさかそういう返答がくると思わなくて、突然の攻撃に目を見開くと、あまりに気まずそうに視線を逸らす女に、また動悸がしてくる。