sugar spot




男の人なのに、“綺麗“だな、と入社した時に思った記憶があった。


きっと誰もが羨ましがるほどの小顔に、整ったパーツが嫌味なく揃っていて、その中でもアーモンド型の瞳が1番印象的かも知れない。

無言のままに隣に腰掛けてきた男は、眉間からす、と鼻筋が美しく通っていて、横顔のフェイスラインも文句のつけようが無い。


「……」

私の視線に気づいた男は、少し不審げに整った眉を動かす。

白シャツの胸元には「有里」と書かれたネームプレートを付けていて、「ああ、そういえばそんな名前だった」と思い出した。


同期と知り合ってまだ1週間。

先週末、みんなで飲み会に行ったけど、
この男は席が遠くてきちんと話はしなかった。


「…ちゃんと喋るの初めてだよね。
梨木 花緒です。よろしく。」

「…有里 穂高です。よろしく。」


ぶっきらぼうな声で一応名乗られたけど、表情が全く変わらない。

この男は、先週の吉澤さんのスパルタマナー講習を忘れてしまったのか。「笑顔で挨拶するのは基本!!」と、死ぬほど教えられたはずだけど。




研修中の座学の際、特に席は決まっていない。

朝、会議室に来た人から好きなところに座る、というフリーな感じで私は最近、よく行動することが増えた奈憂と一緒に座ることが多かった。

「もしかして私、席を移動した方が良いのかな」と思いつつ、なんとなく会議室の入り口を見やると、丁度出社してきた奈憂と目があった。

一瞬、驚いたように可愛い目をぱちぱちと瞬きさせた彼女は、何故か親指を上に突き立ててグーを作る。

そしてそのままにこやかに笑って、離れた別の席へと座ってしまった。

……何がグーだ。

奈憂の古めのリアクションの意図が分からず怪訝な顔をしたのと同じタイミングで、隣からその中性的な顔に全く似合わない舌打ちが聞こえてきた。え、怖。


研修中、隣の人とペアになってワークをすることもよくあるから、出来れば話しやすい人の方が助かるのだけど。

この能面を貼り付けたみたいな男は、大丈夫なのだろうか。


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