拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
出会い

明日から4月だというのに、薄手のコートが必要なくらい肌寒い日に、大きな荷物を抱え都内の研修施設に入る。研修施設と言っても会社と提携している民間のホテルだ。別館にある会議室を研修の教室として利用し、ホテルの客室に寝泊まりすることになる。6週間ここで過ごすことになるが、比較的快適に過ごせそうだ。

私が明日入社する会社は東京都内に本社がある 電子機器メーカーの会社だ。近年では薬剤や化粧品での業績を伸ばしている、大手企業だ。
2週間ほど会社の業務概要等の研修があり、その後の2週間は配属先部門にわかれて専門的な研修になる。計6週間の集合研修だ。
実家暮らしの私はこんなに長く家を空けるのは初めてだ。

各クラス20人中女性が4人という編成で、最初はとても不安でいっぱいだった。
しかも、私のクラスの女性他3人は全員院卒で、私より2歳か3歳年上だった。最初の自己紹介でそれがわかった時、何とも言えない劣等感が襲ってきて、このクラスで6週間やっていけるのだろうか、と心配で仕方なかった。

初日のお昼、ぞろぞろと食堂に向かおうとするとき、トイレに寄っていため出遅れた私に、まだ教室に残っていた牧野君が話しかけてきた。


「食堂行く?」

「うん。みんな行っちゃいましたね。」

牧野くんの席は私の左隣だ。自己紹介の時に知ったのだが牧野君は私と同じ大学の出身だった。ただし、学部が違ったため校舎も別のため全く接点がなかったのだが、話すきっかけにはなった。

「同じ大学ですよね。私は理工学部なんです。」

「うん。さっきの自己紹介で言ってたよね。俺は社会学部なんだ」

牧野君はずっとサッカーをやっていて、体育会のサッカーチームに所属していたと言う。

「えっ!すごい!うちの大学のサッカー部ってプロの人も何人もいますよね。」

私も何度か大学サッカーに試合を見たことがある。その中に牧野君がいたなんてすごすぎる。そんな話をしながら食堂につくと、同じクラスのメンバが牧野君に気づき、空いている席に案内してくれた。
< 1 / 250 >

この作品をシェア

pagetop