拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
片想い、再び
やっと寒さが和らいできたころ、1年続いたプロジェクトがようやく解散となった。
長かった・・・・。ここに配属され、半年もたたないうちにプロジェクトに入り、何度もミスし、落ち込みながらも、吉田さん、須藤さんにご指導いただきながらなんとか終えることができた。
次は、マーケティング部のデータ管理システムの仕様変更を任されることになった。
システム部からは私一人で携わることになったが、設計部の2人と一緒に進めることになり、何かと心強い。
ひと段落ついたこともあり、解放感もあったため、一人で田中さんのお店に向かう。
最近仕事帰りに立ち寄っても、田中さんがいないことの方が多い。仕事が忙しいのかもしれない。
田中さんは良き相談相手だ。
お客さん相手に、いちいち相手していたら大変だろうに、と思うこともあるが、私の愚痴はいつも良く聞いてくれる。
ダメもとでは和美を誘ってみたが、やはり先約があるとのことだった。
和美は飯島くんとは順調のお付き合いをしていて、結婚の話も出ているという。
とても幸せそうで、見ていて羨ましい。
私は、恋人を作るのはしばらく無理だと思っている。
浦橋くんと最後に会ってからもう数か月がたつ。浦橋くんとの恋愛にはもう区切りはつけたつもりだ。
しばらくは引きずってしまっていたが、もう未練もだいぶなくなった。
お酒を飲むと・・・つい田中さんに絡んでしまうことはあったが、もう一人でも平気になった。
ただ・・・牧野くんからは月に1~2回のペースで連絡がある。
電話で長話するだけのときもあれば、ごはんに行くこともある。
サッカー選手として順調に頑張っているようだ。
世界が違う、と何度も思うことはあるが、牧野くん自身は研修のときから変わっていなく、やっぱりいいな、と思うことも正直ある。
だけど・・・好きになるのはもう嫌なのだ。またあの片想いの泥沼にはいるのかと思うと・・・。必死に心にブレーキをかけるしかない。
そのストレスもあり、田中さんのお店に足を運ぶ頻度が高くなっているのも事実だ。
お店に入ると、久しぶりに田中さんの姿があった。
「こんばんは。やっと会えた」
「会いに来てくれてた?」
「いつ来てもいないから」
「これからしばらくはお店出るよ」
「じゃあ、これからもちょくちょく来ます」
ふっと俯き加減で笑う田中さんは、少し疲れているように見えるが相変わらず色っぽい。どっぷり夜の商売の人に見えるが、これで昼間は商社マンだというから驚きだ。
「仕事、大丈夫なの?」
「はい。ここに来ると、また仕事がんばれます」
しばらく手を止めて私を見つめていたが、ふっと笑うと、また手を動かし始めた。
私はお酒を飲むとつい愚痴をこぼすが、恋愛の話を田中さんにしたことはなかった。
前に良く浦橋くんが迎えに来てくれてたことは気づいていたようだが、確かあれは付き合う前だった。付き合っているときは私はほとんどここには来ていない。