拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
微妙な距離
土曜日、久しぶりに残業が続いたせいか、お昼近くまで眠ってしまった。目が覚めると、外はとてもいい天気で、洗濯日和だ。寝坊したことを後悔しながら、慌てて洗濯、掃除、とこなしていく。後でスーパーに行き買い出しに行こう。
一通り家事が終わり、さて、買い物に行こう、と支度をしていると携帯が鳴った。須藤さんだ・・・休みの日に電話なんて珍しい。
「お疲れさまです」
「お疲れ。お前今どこ?」
「家ですけど・・・」
「何か用事あるの?」
「いえ、今からスーパー行こうと思っていただけで、特にはないです」
「じゃあ、今からメシ行こうよ。俺車だから、あと20分くらいで着くから待ってて」
今から・・・。20分か。幸いメークは先ほど軽くしておいたので、ヘアースタイルを整えて、着替えればいいだけだ。慌ただしく支度をすると、あっという間に20分が過ぎ、須藤さんから、着いた、と連絡があった。
エントランスに降りていくと、黒のセダンが止まっている。あれかな、と思い近づいていくと、運転席から須藤さんが降りてきた。
カッコいい・・・
黒っぽいシャツをサラリと着て、ベージュのスラックスを履いている。
近所にちょっと食べに行く、程度かと思い、かろうじてスカートは履いているものの、おもいっきりカジュアルだ。
「すみません・・・」
「何謝ってるんだ?」
「こんな格好で来てしまいました。着替えてきます」
直ぐ戻るので、すみません、と言いながら後ずさり、小走りで家に戻ろうとすると、おいっ、と手首を掴まれた。
「何でだよ。何に着替えてくるんだ?」
「もう少しマシな服を・・・須藤さんに申し訳ないです」
「いいって。別にご飯食べるだけだし」
そう言って助手席のドアを開けてくれて、どうぞ、と言ってくれた。
乗ってから思ったが・・・・私がここに座っていいのかな。須藤さんはあまり気にしないタイプなのだろうか。
私だったら・・・自分の恋人が自分以外の女性を助手席に座らせるのは、やっぱり少し嫌だ。
車が走り出すと、予定、大丈夫だった?と聞かれたので、大丈夫です、と答えると、急に悪かったな、と謝られた。
「何で謝るんですか?今日は予定もなく、暇でした」
「だったらいいけど・・・職場の先輩に言われて、断りつらかったとしたら悪いな、と思って」
須藤さんの口からそんな弱気な言葉が出るなんて・・・意外だ。
思わずふふ、と笑うと、不機嫌そうな顔して、私のことをチラっとみた。
「須藤さんってそういうの気にしない方だと思ってました」
私が笑いながら言うと、そりゃ気にするだろ・・・と小さい声で言うのが聞こえた。須藤さんが小さい声とか・・・何だか益々意外だ。