拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
そう言って打ち合わせに向かって行く須藤さんに軽く頭を下げて挨拶すると、手を挙げてニコっと笑ってくれた。その顔を見て、一瞬胸が高鳴った。一緒に仕事をしている頃の須藤さんは、気難しい顔をしていることが多かったが、最近たまにああやって笑顔をみせてくれる。特別な感じがして少しだけ嬉しい。

自席に戻る前にトイレに寄り、鏡の前に立つと、横に、お疲れ様です、と高い声が聞こえ、お疲れ様です、と返しながら横を向くと、梅田さんがこっちを向いて立っていた。

「週末須藤さんとお出かけですか?」

「・・・お出かけ、というか、少しだけ会いました」

「車、ですか?」

「・・・・・」

隠すこともないのだろうが、直接聞かれるのが気まずくて返事をできないでいると、続けざまに声をかけられた。

「週末は私に急な予定が入ってしまったので、彼も時間が空いたんだと思うんですけど・・・・」

梅田さんと会う約束をしていたのに、急に暇になったから私を誘ったということか・・・

「ちょっとの隙をついてまで会うなんて、やることが、アレですよね」

・・・アレ、と言われても、誘ってきたのは須藤さんのほうだ。が、その誘いのったのは私なのは確かだし・・・、なんといっていいのか、謝るのも変だし、どう答えるべきか悩んでると、今まで私を睨みつけていた梅田さんが、フッと笑うと、

「なんか、余裕ですね」

「・・・余裕?ですか?」

「はい。私となんか、口もきけませんか?」

「・・・いえ、そういうわけでは・・・」

「もう違う部なんだし、いい加減須藤さんに頼るのやめたらどうですか?みっともない」

みっともない・・・営業推進部に異動してからは須藤さんに相談することもほとんどない。業務で関わることはあるが、自分の案件について指示を仰いだり、個別に相談していることはないはずだった。

だが、傍から見たらいまだに頼っているように見えるのだろうか・・・。そうだとしたら、言われるとおり『みっともない』のかもしれない。
少し距離を置いた方が良いだろう。

「・・・失礼します」

小さくそれだけ言って、トイレから逃げるように席に戻った。

自席に戻ると、パソコンで途中まで作業していた資料を見返す。
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