40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで

飛行機の中にて

「私、飛行機初めてなんですよね」
「そ、そうなんだ」

それは、前にも聞いた。
旅行の打ち合わせをカフェでした時に。

「この路線、創作ハワイアン料理が機内食で食べられるんですって！楽しみですね」
「ああ」

それも、聞いた。
初めての飛行機で興奮しているだけ……だろうか？
普段はあまり矢継ぎ早に話してこない優花が、饒舌だった。

「ええと……この画面を触ると、映画が見られるんですね」
「うわー……機内サービスのドリンクに、ハワイっぽいカクテルもあるんですね……ちょっと挑戦しようかな。ココナッツ好きだし」

と言うように、俺の返事を待たずに、独り言を繰り返す。
俺は、何とか会話を試みようとした。
あの子……マナの事を黙っていた件についてを、謝ろうと思った。
少しでも早く。
だけど……。

「優花ごめん、俺……ちゃんと話そうと……」

と話しかけても

「あ、樹さん見てください。今映画館でやってる映画も見られるんですね、面白いですね」

優花は……俺の話そのものを、聞いてはくれなかった。