地下一階の小宇宙〜店主(仮)と厄介な人達
【第2章】テキトー店主と世話焼き客
その日は感動に打ち震えたまま、創太郎が呼んだタクシーにペイッと詰め込まれて駅まで向った。


電車からの家路も、脳内劇場公開によりあまり覚えていない。



ーーー そうちゃん、相変わらず暑苦しいけど、それは自分のやるべき事への情熱がそうさせていたのかも…。
私もウジウジしてないで、自分のできる事をやらなきゃね



何時間か前の不採用メールの事など、遥か彼方へぽいっと追いやられ、今は新しい世界に飛び込む期待と不安に溢れていた。



創太郎は、夢と希望とちょっと不幸な話に極端に弱い佳乃の心と労働力を、ものの3分の演説でガッチリ掴んだのだ。


昨日掲げた学習機能強化の目標はどこへ行ったのか。


ーー まだ眠くならないけど、今日はもう無理やりでも寝よう。


明日の朝から早速 【アンカサ】へ出勤だ。



10日後に日本をたつ予定の創太郎に、店のことを何から何まで教えてもらわなければいけない。



ーーーとにかくできる限り頑張ってみよう。

迷わず行けよ、行けばわかるさ。

おやすみなさい




テンションの向かう先に若干の不安を感じるが、怒涛の一日だったからだろうか。

興奮の割にはベッドに入るとすぐに意識を手放した。
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