地下一階の小宇宙〜店主(仮)と厄介な人達

「そこにはな…

ーー"学校に行きたい。 
でも村に一つしかない学校はこの前無くなってしまった。
家の仕事を手伝っていたから、小学校はほとんど行けなかったけど、今は少し落ち着いて、やっと学校に行けると思ったのに、学校が無くなってしまって悲しい" ーー

ってな…。 」


ガタンっ!!

ふるふると口元に手を当てて震えながら佳乃が椅子から立ち上がった。


「そ…そうちゃん! もしかして… 」


涙目の佳乃が、信じられないと言った眼差しで創太郎を見つめる。


「あぁ。 そうだ…
俺は スマトラに学校を創りに行く!!」


若干表情と台詞が芝居じみているのだが、
この手の話にめっぽう弱い佳乃は全く気づかない。


完全に滑落した佳乃の心は、見たこともないインドネシアの山奥に行ったっきり戻ってこない。



「お前はここであの子達が作ったコーヒー豆で珈琲を淹れる。
俺は学校を創る。
佳乃はこの場所で世界の子供たちを救う手助けをするんだ。」


「わ…私が、できる事があるのね…」


「その通りだ、佳乃!
スマトラもジャングルも南極も日本も同じ地球。同じ宇宙(そら)でつながってんだぞ。」


もう、佳乃の心は決まった。


ーーー これが、私のできる事なら
やるしかない…


佳乃の希望に満ちた顔を見て満足そうに創太郎が大きく一つうなずいた。

「よしっ、決まりだ!


この店の名はな、

【アンカサ】だ。

インドネシア語で宇宙(そら)って意味だ。

佳乃!!お前はここで頑張れ!」



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