地下一階の小宇宙〜店主(仮)と厄介な人達
初めは周りを通る女達がチラチラと視線よこしてきていたが、今ではしっかりと目的を持って海星の姿を覗きに来ているような女達が目立つ様になってきた。


「相変わらずお前といると動物園のパンダになった気分」


ショウヘイが、固まってこちらを見ている女のグループに目をやって呆れたように言う。


海星はそれに答えるように背の高い回転椅子をくるっと回し、その女達に背を向けた。


「よぉ! ショウヘイ、海星!」


不意に横から掛けられた声の方を見ると、
コウタの友人で、昔つるんでいた先輩と、今ではすっかり疎遠になった "ミツル"や、何人かの男女が固まって近付いてきた。


ミツルに会うのは、佳乃に初めてアンカサで会って言い合いになった後、バイクで向かったあの溜まり場以来だ。

「な〜んか店の中の女子がソワソワしてると思ったらお前らのせいか! 

イケメンが並ぶのは女子ハンターの俺の営業妨害だぞ〜!」


「マサくん! 久しぶりっすね〜!
営業妨害は俺じゃないけど〜!」


海星は美しく整った美男子だが、ショウヘイはショウヘイで精悍な顔つきの、タイプの違うイケメンである。


"マサくん" とは、コウタの同い年の友人で、昔はよくつるんでいた先輩だ。


海星は少し表情を緩めて軽く挨拶を交わしたが、後ろでニヤニヤとこちらを見ているミツルが視界に入って、上がりかけた口角が動きを止めた。


そんな様子をすぐに察したショウヘイが、軽い調子でマサに尋ねる。


「ミツルと一緒なんて珍しいっすね! 」


ミツルは中学の頃からショウヘイと海星と同じ学校だが、二人の後を勝手にくっついて来るだけで、マサやコウタとは、大した交流は無かったはずだ。


「さっき入口の前で偶然声会ったんだ。
最初誰かわかんなかったけど、お前らの名前出されてやっと思い出したよ!」

相変わらず誰かの後をくっついていく奴だ。

うるさい店内で、マサの後ろにいるミツルにどれだけ聞こえてるかは謎だが、雰囲気に乗ってきたのか、ミツルが顔をのぞかせて話し始めた。

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