地下一階の小宇宙〜店主(仮)と厄介な人達
「マジで懐かしくて嬉しいっすー! 
ショウヘイも久しぶりぃ!!」


海星と同じくミツルを鬱陶しく思っているショウヘイは、片方の口角を上げて顎で頷くだけだった。


「俺、コウタんとこ行ってくるわ! 
 後でな!」


マサがさっさとその場を離れ前が空くと、ミツルの横に居る女が、海星の方へ近付いた。


「本物初めて近くで見た!
海星君でしょ? 
二人なの? 
私達、女子も結構いるからこっちで一緒に飲まない?!」


 赤い飲物のグラスを片手に自信有りげな女が言う。

派手だが顔付きはまだ少し幼さを残していて、海星と同じか1つ2つ年下くらいだろう。


反応するのも面倒で、海星は黙って無視を決めこもうとしたが、ふと、何か違和感を感じてその女の顔をジッと見返した。


「お!クールなカイくんが反応するなんてめ〜ずらしぃ〜! なに?! 好みっ?!」


ミツルがからかう様に、その女の肩に腕を回して海星の顔を覗き込んだ。


そんな事より海星は、この女の顔の方が気になってそれを無視すると、女はミツルの腕を払ってまた一歩海星へ近付いた。

「っおい!」


無視された事にも、女に振払われた事にも腹を立てたミツルが表情をかえる。


「ねぇ…どう? 一緒に遊ばない?」


海星に見つめられて自信を更に強くした女が、甘えるように海星の腕に手を置いた。


ずっと女の顔を見ていた海星だが、腕を触られたのには流石に気がづいた。

「っ触んな!」

バッとその手を振り払う。


「っえ…! びっくりさせちゃった? 
どうしたの? 何かあった? 話聞くよ?!」


何をどう勘違いしたのか、手を振払われたのは自分が原因ではなく、過去の何かのトラウマがそうさせたという口ぶりだ。


わざとらしく盛大に悲しげな表情を作る女に一気に嫌悪感がせり上がって来る。


「 帰るわ 」


「え!? ちょっと待って海星くん!」


「おい!待てよ、アミ!!」


"アミ"と呼ばれた女が、突然椅子から降りた海星を追おうとしたが、ミツルに手首を掴まれそれを阻止された。

それを横目で一瞥し、海星はさっさと出口へ
向かい外に出た。

< 65 / 97 >

この作品をシェア

pagetop