地下一階の小宇宙〜店主(仮)と厄介な人達
「 かふぇっっ!!? 」


また突然すっとんきょうなことを言い出す母に驚いて声が2回転くらい裏返った。

母の突拍子も無さにいい加減慣れろと思うが、何度言われても、すっとんきょうなものは素っ頓狂なのだ。


『どっから声出してんのよ。変な子ね。』


ーーー 変…

あなたが他人に吐いていいワードではない…


「なによ、突然カフェとか! 
どっかの国で石探してるかと思ったら…
凄いコーヒー豆でもみつけたわけ?」


ジュエリーデザイナーの母、静香は、
宝石の質を追求していくあまり、とうとう採掘にまで自ら関わるようになったのだ。

母が初めて南米に採掘の旅に出たのは、佳乃が小3の時である。


それからと言うもの、定期的に世界中のあちこちに原石を探しに行っていて、家にいるのは一年の内おそらく3分の1くらいだ。


『あはは、コーヒー豆見つけてきたのは私じゃなくて、そうたろうよ。 
なになに?!そうたろうの店に興味あるの?!』


「はっ?! 私一言もそうちゃんの話ししてないと思うけど!」


『またまた〜! 佳乃小さい頃、そうたろうと仲良かったじゃない よく遊んでもらってたでしょ』


"そうたろう" こと、振田 創太郎(ふりだ そうたろう)とは、母の弟で、私にとって叔父にあたる。


本当によく似た姉弟で、行動パターンも行動原理もそっくりなのだ。

"よくあそんでもらってた" とは物は言いようで、

"遊ばれてた" が真実である。


私にとっては 鬼門 といえる人物だ。


「どこをどう見たら遊んでもらってたの!
私が嫌いな虫とか爬虫類とか見つけてきては、私を追っかけ回して大笑いしてたんだよ 
いいブローチしてるな、とか言って私の服に大きい虫つけてきたり!

私未だにブローチ見るだけで一瞬ビクッとするんだからね!」


『あはは、 創太郎がさ、スタッフ探してるらしいよ、やらない?あんた暇でしょ。』



「ぜっったいやらない!!」



『なんでよ〜、ぷー太郎なんでしょう?』


「プーじゃないよ!今日から職探しなの!
しかもよりによってそうちゃんと働くとか、私一週間で精神に異常をきたす自信ある」


私にブローチ恐怖症というトラウマを与えた叔父だ。
これからまたどんな精神的苦痛を与えられるか計り知れない。

『何もさ、創太郎と一緒に働けって言ってんじゃないの。
創太郎の代わりに店をやんないか?って話し!』 


「 は?  代わりに店をやる?!
どういうことか全然意味わかんない」

『私もよく知らないけどさー、 なんか東南アジア?が呼んでる?とか言ってたっけな?
でも期間限定!! 
新しい就職先見つけるまで給料とか困るでしょ? 
3ヶ月間だけでいいからやってくれってさ。 その間に次の職場ゆっくり探して、 おまけに繋ぎの働き口までこんな早く見つかるなんてね! 
あんたツキが巡ってきてんじゃない?』

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