ひびき

便り

その大きなオレンジジュースの水溜まりに、私はゆっくり指を浸した。

舞ちゃんは突然変な事をし始めた私を見てぎょっとしている。

それに構わず、私は指をレンガで出来た地面に這わせる。

舞ちゃんに伝えたい事。

声に出せないから、

こうやってここに印します。

すぐに消えちゃうけど。

あなたの心にずっと、ずーっと残ってほしいなって

祈りながら。

私は指を動かした。

『まいちゃんへ
まいちゃん、あなたは強いです。
それはとってもいい事だけど、がまんするのはよくない事。
言いたかったら言えばいいの。
私にいつだってそうだんしてね。
たく兄には伝えたほうがいいと思うよ。
心配するかもしれないけど、ちゃーんと側で見守ってくれる人だから。
安心しなさいっ!!』

書き終えると、それは西日を浴びてキラキラ光り、消えていった。

数分で地面はもと通り。

それでも
舞ちゃんはその場をじっと見つめて、

そして
にこっと笑った。

「響子ちゃん!!ありがとうっ!!
私、拓兄に伝えるよ!!」

嬉しそうにかけていく舞ちゃん。

ーーーーーーよかった。

『お姉ちゃんに会いたいよぉ』

って泣いてたのが嘘みたい。

ふと
脳裏に
二つに髪の毛を結んだ、白いワンピース姿の女の子が浮かんだ。

それと同時に

激しい頭痛が襲った。

一体なに・・・?

それに女の子、
泣いてた。

誰?

見た事ある・・・。

もしかして、
ーーーーーーーーーーーーーー私?

ぐるりと視界が反転した。

『響子ちゃん!?』と叫んでいる舞ちゃんの声がする。

私は自分の頬が地面に触れるのを感じた。
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