ひびき

雨降る午後




雨。

嫌な気分になる。

心まで湿らされて、何をするにも退屈になる。

そんな気持ちになるんだ。

私は廊下の窓を見て大きなため息をついた。

我ながら最悪だ。

今私は廊下の隅っこにしゃがみ込んでいる。

何故なら
あの居心地の悪い空気から抜け出してきたからだ。

私が暴れた後、同じ同室の人達は怪訝な顔をして視線を逸らした。

小さな子供は怯えていたような気がする。


狂人。


その時、誰もがそう思っただろう。

あの視線を思い出すだけで涙が込み上げてきた。

私は、
私はただ、
自分の記憶と声を取り戻したいだけなのに。

・・・ダメだ。泣きそうになる。

こんな事していてもなんにもならない。

私はふらりと立ち上がった。

ーーーーあれ?

窓からあの青年の姿が見えた。

病院に慌てて駆け込んでいる。

ふと、ある事がよぎる。

もしも、

もしも彼が

私がこんなに変な人間だと知ったら、

どうするだろうか。

そう考えるだけで気持ち悪い恐怖心にかられた。

初めて
自分自身が怖くなった。
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