噛み痕にキス
先程と一緒。
腕を掴まれて、エレベーターから出される。
目の前で扉は閉まり、あたしは振り向けずに、噛み痕の残る手の甲で涙を拭った。
「……なんで泣いてんの」
首を振る。泣いていない、と言いたいのか、泣いている理由が分からないのか。
「身体痛いとか」
首を振る。
「後悔してるとか」
首を振る。
「帰る金なかったの、思い出したとか」
ひらひらと井花が何かを振る気配に顔を上げた。
私の財布があった。
きっと出てくる途中で落としたんだろう。
井花はちょっと笑った。
「ヤリ捨てすんなよ」