同期に恋してしまったら~友達からはじまる恋ってありますか?~
「けど、役者はやるなと親父に言われてたから断ってたんです。で…この間高柳さんにも見てもらった映画は、内緒ででました。」

内緒?

「そしたら、めちゃくちゃどなられて殴られて『お前は水沢建設の跡取りだって自覚あるのか!お前が責任感なかったら社員は路頭に迷うんだぞ!』って言われて…」

そして軽くため息をついた。

「モデルとかやってた人間が勉強もろくにしてねぇのに跡取りって突然言われてもって思いません?」

まぁそれは確かに… 怒りたくもなる…

「『このままモデルやるなら、おまえとは縁を切る。今後自分で全部やりくりしろ。』って言われたんすよ。そしたら俺も怖くなって…会社に入ってがんばるって言ったんです。けど…」

水沢くんはハンドルに両手を置いた。

「見ての通り、現場の仕事も営業も、ましてや管理系の仕事も、俺には向いてない。楽しくないし、仕事できねー自分が嫌になるし、やっぱり俺は…」

そしてわたしを見た。

「やりたいのは役者なんです。だから、親父にかけあったんです。で、説得しました。」

「説得できたの?」

「はい。昨日は帰れって言われました。けど、今日もめげずに土下座もして頼み込んで、それでも『うん』って言ってくれなかったんで、『もう勘当したいならしてくれ。俺はどうしても役者をやりたいから。』って言ったら。なんとか折れてくれました。会社はそのかわりもうおまえにはやらんって言われましたけど。」


< 135 / 183 >

この作品をシェア

pagetop