同期に恋してしまったら~友達からはじまる恋ってありますか?~
「そう。やるじゃん。」

ちょっと見直した。
そんな大それたことできるような人間には思えなかったから。
大会社のおぼっちゃんで、何不自由なく育ってて、きっと好き勝手やってるからあんなに仕事できないんだと…
それで役者やりたがってるってわかってからは、結局やりたいことやるような勇気がない人間だと思ってたから…

「高柳さんのおかげっす。ありがとうございました。それ…いいたくて。」

そしてちょっとはにかんだ笑顔をわたしに向けた。
この間のキラースマイルなんかじゃないほんとに心の底から笑ってる笑顔だった。

「なんで、今年いっぱいでみさきシステムはやめることになりますけど。1か月でしたけどありがとうございました。」

「そっか。がんばってね。応援してるから。」

「はい。」

この間見たあの映画…
きっと水沢くんはほんとに役者は天職なんだと素人ながら思った。
ほんとにほんとに輝いてた。

そして今笑った笑顔は、本心の笑顔だったし、きっとほんとにうまくいきそうな気がした。

「あ、そうだ。水沢くん。甘いもの好き?」

「え?」

そうだ。昼ごはん食べたとき、デザートのプリン、ペロリ食べてたよね。

「餞別あげるよ。ちょっと待ってて。」

そしてわたしは車を降りると、自分の部屋から昨夜焼いたパウンドケーキを持って来た。

下に降りたら、水沢くんは車を降りて待っていた。

「はい。お口に合うかわかんないけどね。ラムチョコケーキ。」

「いいの?」

水沢くんが嬉しそうな顔をした。

「一生忘れねぇ。俺のために作ったもんじゃなくてもね。」

「え?」

「ありがと。奈桜さん。」

そして…
なにがなんだか…わかんないんだけど…
ほんとにドラマみたいに…自然に水沢くんが…

水沢くんの顔が、高いとこからスーってわたしの顔に近づいて…

一瞬…
ほんの一瞬…唇が触れた。

「じゃあね。」

そして、ニコッと笑うと車に乗り込み…
走り去って行った。

は…?
なに今の…?
ドラマみたいなの…



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