不純異性交際 -瀬川の場合-

少しの沈黙の間、私は ”いけない事” をしたんだと改めて感じる。

「…んまぁでも、なんかしちゃったわけでもないし…ねぇ?」
ケイが私に言葉を促す。

「そ、そうだねぇ…。奈美としては、”いけない事”になっちゃいそうな感じがあるの?」


私が聞くと奈美は一点を見つめて紅茶をすすり、なにかを考えている。

「ないとは、言い切れない…。だって、ドキドキしちゃったのは本当だし…会わないほうが良い気もしてるんだよね」


「でもさ、お互い子供の話もしてるわけだし。ミノルくんだって、そんなに節操のない人ではないと思うけどねぇ」

ケイの言葉に、私も同意する。
なにより、奈美自身がミノル君に会いたいのだと分かる。


「まぁ、ちょっと考えてみる。仮にそうなったとしても、私がしっかりしてれば大丈夫だもんね。旦那も恭介もいるし…しゃんとしなきゃ」

「そんなに考え込まずに、とりあえず時間をおいてみたら?
連絡取ってたら、ミノル君の思惑も分かってくるかもしれないしさ」

「うん、そうだね!」



「・・・で。」

ケイが私に鋭い目線を送る。
うわぁ…これはとてもまずい展開かもしれない。

奈美はミノル君となにもしていないのに今から悩んでいるし、そもそも2人とも夫も子供もいる。
とても言いづらい…。



「どうなの、ミライは」

「二次会、楽しかった?」

2人に聞かれると、私はもじもじしてしまう。


バラ組に嘘はつきたくないと奈美は言った。
私だってそうだ。
でもこれは、瀬川くんも関わっているし私だけの問題ではない…勝手に言っていいものなのか。


「あれ?ミライ、ほんとになにかあったの?」

奈美に問われる。


「うーん…えっとね…二次会、楽しかった!アンナが酔いつぶれて、アンナの彼氏くんが迎えに来てさ~!大変だったよもう(笑)」

てっきり”アンナの彼氏”に食いついてくるかと思った2人は、いぶかしげな表情で私を見ている。


「…え?反応なし?」


「…ミライ、なんかあったね。」
「うん、あったと思う。」

「隠す気かね?」
「どうなんでしょう」

2人は結束して私を煽る。


何もないと言えば嘘をつくことになってしまう。

私は紅茶を飲んで、ハァーと深呼吸した。


その様子を見てケイは
「ねぇ、、そんなにやばい事しちゃったの?」
と、本気で心配し始める。


「うーんと…なにから話せばいいかな…まぁ簡潔に事実を申し上げますと…

二次会の帰りに、瀬川くんと キ、キスをしてしまいました…っ」


2人の反応が怖くて、ついすごく早口で言ってしまった。



一瞬の間をおいて、2人は紅茶をこぼす勢いで
「…えぇーーーーーーーー!!!!!!?」
と大声を出した。


「本当は誰にも言えない事だし、これって浮気だよね。でも…、私もバラ組に嘘はつきたくない…」


それから、事の成り行きやどっちがどうしてとか、事細かに尋問を受けた。
2人は私を軽蔑している様子はなかった。


「引いてるよね・・・?」

私が聞くと、奈美は「全然」と言って平気そうに紅茶をすする。
「そりゃあビックリはしたけどね」


「私も結婚してから2~3年はさ、色々あったもん。だからなんだか気持ち分かるかも」
ケイが話し始める。

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