僕等はきっと、満たされない。
父さんの部屋で手紙を見つけた
『雅』という宛て名になってた
オレに宛てた手紙だと思って読んでしまった
内容を読んで
その人が女性だとわかった
父さんはその人を愛していると知った
母さんのことは愛していないと悟った
『雅』
雅(みやび)さん?
オレが子供の頃
よく一緒に遊んでくれたお姉さん
父さんの高校時代の同級生だと言っていた
「まさりくん
かっこいい名前だね
お姉さんと同じ字だね」
「ぼくとおなじなまえなの?」
「私はね、みやびっていうの」
まさか…
父さんと母さんも親同士が決めた許婚だった
父さんはきっと雅さんを好きだった
手紙を読んで
父さんは今でも雅さんを愛していること
今でも雅さんに会っていることが
わかった
ショックだったし
吐き気がした
「オレは、ホントに母さんの子供なんか?」
手紙を持って父親を問い詰めた
「雅、お前は母さんによう似とる
子供の頃から、よう言われとったやないか」
はぐらかす父親に苛立った
「そんなにこの旅館が大事なんか?
…
母さん悲しませるなや
…
子供の名前に
好きな女の名前付けんといてや
雅さんに、もぉ会いなや
…
そこまでして
継ぐ必要あるん?
家族犠牲にして
この旅館守ってる気なんか?
…
オレは
こんな旅館より
晴が、晴が大事…
晴を傷付けとうない」
部屋を出る時
母親とすれ違った
聞かれた
たぶん母さんは雅さんと父親の関係も
とっくに知ってた
母さん
ずっと寂しかったよね
ずっと辛かったよね
オレがここに戻らなきゃ
母さんが報われない気がした