僕等はきっと、満たされない。

「宙
今度、私も京都行ってみたい」



「どーしたの?」



「んー…
まだちょっと行く自信ないけど
いつか行ってみたい

連れて行ってくれる?」



「うん…
晴夏が行けるようになったら
一緒に行こう」



今日も優しく私の手を握ってくれる



私はね

宙に出会えてよかったよ



「宙…温かいね」



「うん、いい天気だね」



「じゃなくて…」



温かいのは

宙だよ



「ん?
今度の週末
オレも休みだから桜見に行こうよ」



「うん
晴れるといいね」



「なに?
晴夏、笑ってる?」



「ん?うん
だって楽しみだから…」



季節は

寒い冬から

春になってた



「晴夏、最近よく笑うね」



「そぉかな?」



「うん
かわいいよ」



「ホント?」



「うん、ホント
もっと笑って…」



「ヤダー
恥ずかしいから…」



「うん
晴夏がもっと笑顔になれるように
オレ、がんばるね」



「がんばるって、何を?」



「晴夏がもっとオレのこと
好きになってくれるように
がんばる」



「がんばらなくてもいいよ

がんばらなくても
もぉ、宙のこと好きだから…」



心に空いた穴が

少しずつ埋まってく…


宙が埋めてくれる



「宙…好きだよ…」



「うん…オレも好きだよ…

でも…
忘れなくて、いいからね…」



「ん?なに?」



「晴夏が好きだった人のこと
忘れなくていいからね…

忘れたら、ダメだよ…」



そう言ってくれる





「うん…ありがと…」



「でも、許してるのは
その人のことだけだから…

アプリ消したよね?
他の誰かに会ったりしないでほしい」



「とっくに消したよ
でも宙とのメッセージは残してる」



「なんで、そんなことしてんの?」



「ん?
私たちは、そこから始まってたから」



宙に出会えて

よかったよ



見つけてくれて

ありがとう


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