僕等はきっと、満たされない。

宙くんは仕事で京都に行く度に

私にあの人の香りを買ってきてくれた



あの人に会いたくなると

私はひとりでお香を焚く



「晴さん
またお香焚いた?」



「うん…」



私からあの人の香りがすると

宙くんはいつも

優しく抱きしめてくれる



朝までベッドで
抱きしめてくれることはあっても

前みたいに身体で繋がることは

もぉなかった



宙くんの優しさが

心地よくて気持ちよかった



「晴さん…」



あの人を忘れようとして出会った

宙くんに

支えられてる



忘れなくてもいいですよ

宙くんがそう言ってくれた



「晴さん…」



宙くんは私を抱きしめながら

優しく名前を呼んでくれる



晴…

いつまでも

あの人を思い出す



宙くんは

あの人じゃない



「宙くん…」



宙くんは

私に出会って

よかったのかな?



そう思いながらも

私は

宙くんを離すことができない



あの人の香りの中で

あの人の温もりを思い出す




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